「真実の口」2,103 ‟がん”という病 ㊿~がん治療による様々な症状・便秘編~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【体の一部に起こる症状】

6⃣ 便秘

( 1 ) 便秘について

● 呼吸困難とは、「息切れや息苦しさ」などの、呼吸をするときの不快な感覚のことである。

● 便秘とは、便を十分にかつ快適に出し切れない状態のことである。

● 便秘が続くとおなかが張って苦しくなったり、吐き気や食欲低下につながったりすることもあるため、早めに対処することが大切である。

( 2 ) 原因

● ‟がん”の治療中に起こる便秘は、多くの場合、生活環境や生活リズムの変化などとも関わりながら、次のようなさまざまな原因が重なって起こる。

・食事や水分が十分にとれない
・運動量が減る
・気分が落ち込む
・‟がん”の治療に用いる薬(細胞障害性抗がん剤分子標的薬など)や痛み止め(医療用麻薬)の副作用
・‟がん”による大腸の圧迫や閉塞
・加齢
・糖尿病
・甲状腺機能低下症

・・・等々

( 3 ) 便秘になったときには

● 便秘の治療では、 1 日の排便回数が何回になるかということよりも、心地よい排便ができるようになることが大切である。

● 多くの場合、下剤を使い、それでも便秘が改善されないときには、便秘を生じやすい薬(医療用麻薬など)を減らす、下剤の量を調整するなどを検討する。

● 便秘および便秘の予防に用いる薬のタイプには、のみ薬、坐薬、浣腸がある。

● 薬の種類には、便に水分を含ませ軟らかくする薬(酸化マグネシウム)、腸を刺激し大腸の動きを促進する薬(センナ等)、腸液の分泌を促し便を軟らかくする薬(ルビプロストン等)、医療用麻薬による便秘を予防し改善する薬(ナルデメジン)などを用いることがある。

● 薬の種類や量は、症状の強さや効果の具合によって担当医や薬剤師、看護師と相談しながら調整していく。

( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫

~ 無理のない範囲で身体を動かす ~

● 無理のない範囲で体を動かすことは、便秘の予防につながる。

● 外出したり歩いたりできない場合には、ベッドの上でおなかを動かしたり、ベッドからいすに移る運動をしたりするだけでも、腸を刺激して排便を促す効果がある。

● おなかをやさしくマッサージする方法や、腰やおなかを温める方法も良い。

~ 水分を摂取する ~

● 水分を十分にとり、脱水を予防することは便秘の予防に効果的である。

● 摂取する水分量の目安は、個人により異なるが、一般的には 1 日に 1.5㍑ 程度である。

~ 食事を工夫する ~

● 適度に体を動かし、水分を摂取していても便秘が続く場合には、食物繊維(特に水溶性食物繊維)を多く含んだものを食べることが効果的である。

● 食物繊維は、主に豆類、きのこ、海藻、果物などに多く含まれる。

● ただし、体の状態によってはとりすぎるとよくない場合もあるので、医師と相談して決める。

● ヨーグルトのような乳酸菌などの生きた微生物を含む食品は、適正な量をとると便秘を和らげる効果がある。

● 病気の状態によっては食事や水分の制限もあるで、医師と相談しながら、食べられるものを、バランスよく食べることが大切である。

~ 落ち着いて排便できる環境を整える ~

● 落ち着いて排便ができるトイレの環境を整える。

● 便意を感じたらすぐトイレに行き、我慢しないようにする。

● 我慢しすぎると腸の活動が悪くなり、便意を感じにくくなる。

● 便意がなくても毎日決まった時間にトイレに行き、排便する習慣をつけることもよいといわれている。

~ 生活リズムを整えるなどのその他の工夫 ~

● 排便のリズムを整えるためにも、生活リズムを整え、十分に睡眠をとり、ストレスをためないようにすることが大切である。

● 排便するときには、前かがみの姿勢がよいといわれている。
【排便の姿勢】
排便の姿勢

( 5 ) こんなときは相談する

● 3 日以上排便がないとき、下剤を使って 1 ~ 2 日たっても便が出ないとき、腹痛や嘔吐があるときには担当医や看護師に相談する。

● おならが出ない、腹痛がある、嘔吐する、おなかがひどく張る(腹部膨満感がある)と感じた場合には、腸閉塞(※注 1 )の可能性もあるためすぐに担当医や看護師に伝える。

(※注 1 ) 何らかの原因で腸管の通りが悪くなる状態のことをいい、腸の炎症による部分的な癒着ゆちゃく(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)や‟がん”などによって腸がつまることや、腸の動きが悪くなることなどによって起こる。腸の動きが悪くなることによって起こる腸閉塞をイレウスともいう。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐おうとなどの症状が発出し、多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復するが、手術が必要になることもある。

●下剤は、自分の判断で始めたりやめたりせず、薬剤師や担当医に相談してから判断する。

● 毎日排便があるか、硬さ(表 1 )や量がどのようであるかを記録しておくと、診察の際に担当医に伝えるのに役立つ。
【便の硬さ(ブリストルスケールによる分類)】
便の硬さ(ブリストルスケールによる分類)

● 水分や食事をとった後にむせたり、咳、痰が多くなったりする場合には、誤嚥の可能性があるので、すぐに医師や看護師に伝える。

● 症状の現れた時期や頻度、咳に痰がからむかどうか、痰の色、発熱や胸の痛みなど別の症状の有無、日常生活で支障が出たことなどをメモしておくと、診察の際に医師に状況を伝えやすくなる。

次回へ・・・。