「真実の口」2,029 新たな脅威?・・・その3

前回、‟サル痘( mpox )”について寄稿した。

今回は‟マールブルグ病( MVD )”を取り上げたいと思う。

‟マールブルグ病”は、エボラ熱のような制御不能の出血を引き起こす致死率の高いウィルス感染症である。

その致死率( CRF )は、 24 ~ 88% である。

発症初期には、臨床症状が類似しているため、他の多くの熱帯熱性疾患と区別して診断することが困難らしい。

エボラウィルス病をはじめ、マラリア、腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア感染症、ペストなど、他のウィルス性出血熱を除外する必要がある。

ヒトのマールブルグ病感染は、ルーセットオオコウモリのコロニーが生息する鉱山や洞窟に長時間曝されることで発生することがある。

マールブルグウィルスは、感染者の血液、分泌物、臓器、その他の体液、およびこれらの体液で汚染された表面や材料(寝具、衣類など)と(粘膜や傷ついた皮膚が)直接接触することによりヒトからヒトに伝播する。

ウィルスを治療するための抗ウィルス剤やワクチンは承認されていない。

ただし、支持療法(経口または点滴による水分補給)および対症療法により生存率が向上しが確認されている。

現在、血液製剤、免疫療法、薬物療法など、さまざまな治療法の可能性が検討されている。

ヒトへの感染は、 1967 年に、ドイツとユーゴスラビアで実験用に使用されていたウガンダから輸入された猿と関連して、初めて報告されている。

以後も何度かアウトブレイクを起こしており、 2017 年には東アフリカのウガンダ東部(ウガンダとケニアの国境地帯)での流行が報告されている。

2021 年には、西アフリカのギニアで初めてマールブルグ病の集団発生が報告された。

2022 年 6月 28 日から 9 月 16 日の間に、ガーナでは、死者 2 名を含む 3 例のマールブルグ病の確定症例を報告している。

今年に入り、 2 月 13 日、赤道ギニアで、マールブルグ病のアウトブレイクを初めて確認されている。

赤道ギニアの保健当局は、 2 月 7 日に地域の保健当局から警戒報が発せられた後、 WHO の支援を受けてセネガルのパスツール研究所に検体を送り、病気の原因を特定した。

パスツール研究所で検査された 8 つの検体のうち、 1 つの検体がウィルス陽性であることが判明し、これまでに 9 人の死亡者数及び 16 人の疑い感染者数(発熱、疲労感、血液を伴う嘔吐・下痢症状を伴う。)が報告された。

その後、 3 月 21 日、検査確定症例が新たに 6 例報告され、これにより、 2023 年 2 月 13 日のアウトブレイク宣言以降、検査確定症例は 15 例、推定症例は 23 例となった。

検査確定症例のうち 11 人が死亡し、致死率 78.6% となっている。

確定症例のうち 1 人は転帰不明で、推定症例は全例死亡となっている。

また、 3 月 21 日、アフリカのタンザニアでは、北西部のカゲラ( Kagera )州で発生した感染者と死亡者の報告を受けて検査を実施し、同国史上初のマールブルグ病患者を確認した。

タンザニアの国立公衆衛生研究所は、 8 人が発熱、嘔吐、出血、腎不全などの症状を呈した後、病気の原因を特定するためにサンプルを分析し、 8 人のうち、医療従事者を含む 5 人が死亡し、残りの 3 人は治療を受け、アウトブレイクを宣言している。

3 月 22 日現在、タンザニア、カゲラ( Kagera )州ブコバ( Bukoba )地区にある 2 つの村から、死者 5 人を含む計 8 人の患者(致死率 62.5% )が報告され、このうち 2 名は医療従事者であり、 1 名は死亡している。

また、合計 161 人の接触者が確認され、健康監視されている。

米疾病対策センター( CDC )は 4 月 6 日、アフリカのタンザニアと赤道ギニアでマールブルグ病の発生が確認されたことを受け、医療機関に注意を促した。

CDC は、米国で確認された症例はなく、現時点でリスクは低いとしながらも、国外から持ち込まれる可能性があると指摘している。

マールブルグ病感染が疑われる患者については詳細な渡航歴を確認し、検査で陰性が確認されるまで隔離して、直ちに地元の保健当局に連絡する必要があるとしている。

コロナ後の移動が増えている現在、ウィルスの世界伝搬が気になるところである。