前回、インフルエンザ、ヘルパンギーナ、感染性胃腸炎という感染症の状況を寄稿した。
今回は、手足口病から取り上げてみる。
手足口病は、ウィルスを原因とする夏に流行しやすい感染症である。
コロナ禍前の 2019 年の日本での患者数は、約 40 万人にも上った。
子供に多い感染症だが、稀に、大人でも発症する。
手足口病の多くは自然に回復するが、子供の場合は、時に重症になることがあるので要注意である。
手足口病は、おおよそ3 ~ 6 日間の潜伏期間を経て発症し、主な感染経路は、飛沫感染、接触感染、経口感染である。
昨年同時期の 1 医療機関あたりの感染者数は 0.60 人である。
しかし、今年第 25 周期( 6 月 19 日~ 6 月 25 日)は 0.89 人となっている。
全国の感染状況を見てみよう!
手足口病は、例年、 8 月~ 9 月にかけて感染拡大して 1 医療機関あたり 5 人を超過することもある。
また、近年、手足口病の報告数は、年によって大きく異なり、コロナ禍前では、 2011 年、 2013 年、 2015 年、 2017 年、 2019 年と奇数年が報告数が多かった。
これから見れば、今年は 2023 年という奇数年で当たり年になりそうである。
現在のところ、手足口病を根本的に治す治療薬はないため、基本的には免疫の働きによって自然に治るのを待つしかない。
飛沫感染、接触感染、経口感染ということなので、人込みを避け、暑い夏で水遊びをする子供は、プールの水が目の結膜に触れることでも感染したりするので、注意するとともに、タオル等の共有を避けるようにした方が良い。
次に、 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎だが、 A 群レンサ球菌による上気道感染症である。
乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎が現れ、発赤毒素に免疫のない人は猩紅熱といわれる全身症状を呈する。
気管支炎を起こすことも多く、発疹を伴うこともあり、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次疾患を起こすこともある。
感染経路は、ヒトからヒトへの飛沫感染や接触感染が主であるが、食品を介する経口感染もあるといわれている。
通常は患者との接触を介して伝播するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに発生しやすく、家庭での兄弟間や、学校、幼稚園、保育園などの小児の集団生活施設内での感染も多い。
感染性は急性期に最も強く、その後徐々に減弱する。
無症候性病原体保有者も存在するが、症状のない保菌者からの感染は稀であると考えられている。
昨年同時期の 1 医療機関あたりの感染者数は 0.22 人である。
しかし、今年第 25 周期( 6 月 19 日~ 6 月 25 日)は 0.81 人となっている。
全国の感染状況を見てみよう!
下のグラフは、今年感染が拡大している広島県での過去 6 年の定点辺り報告患者数である
感染拡大中なのが見て取れる。
予防としては、患者との濃厚接触を避けることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も励行すべきとされている。
また、マスク着用も効果が期待できるので感染拡大地域では励行したほうがよさそうだ。
さて、いくつかの感染症に関して取り上げてみたが、感染症・予防接種ナビでは、過去 5 年間の全国 47 都道府県の定点あたり報告数(厚生労働省・国立感染症研究所IDWR週報)の値の 95% に相当するパーセンタイル点を超える値を本格的な流行として、感染症アラート情報を発信している。
各都道府県で感染拡大している感染症を取り上げるので注意して欲しい。
【北海道・東北地方 感染症アラート】
【関東地方 感染症アラート】
【北陸・甲信・東海地方 感染症アラート】
【近畿地方 感染症アラート】
【中国・四国地方 感染症アラート】
【九州・沖縄地方 感染症アラート】
感染症アラートが出ていないのは高知県と沖縄県のみである。
感染症に十分な注意を払い with コロナの中、夏を乗り切ろうではないか!!