「真実の口」2,152 来るべき大地震に備えて ⑭

前回の続き・・・。

【 生活への影響~避難者~ 】 

《地震発生直後》

◎ 多数の避難者の発生 :
・ 地震・津波等による建物被害、ライフライン被害及び余震への不安等により、多くの人が避難所へ避難する(約 210 万人~約 430 万人)
・ また、比較的近くの親族・知人宅等へも避難する(約 120 万人~約 270 万人)
・ 津波警報の発令、崖地の崩落や土砂崩れによる被害の発生を防ぐために、避難勧告・指示が発令され、広いエリアで多くの避難者が発生する。

◎ 指定避難所以外の公共施設等への避難 :
・ あらかじめ指定されていた学校等の避難所だけでなく、市区町村庁舎、文化ホール等公的施設、公園、空地などに避難する人が発生する。
・ 防災関係機関の施設にも避難者が押しかけ、災害応急対策に支障が生じる
・ 指定避難所以外にできたテント村等が当初認知されず、食料や救援物資等が配給されない事態が発生する。

◎ 帰宅困難者等の避難による混乱:
・ 帰宅困難者・徒歩帰宅者が避難所等に避難し、混する。

◎ 避難所の避難スペースの不足 :
・ 被害の大きな地域では満杯となる避難所が発生する。
学校では当初予定していた体育館や一部教室だけではなく、廊下や階段の踊り場等も避難者で一杯となる。
耐震化が未了の避難所自体が被災するおそれがあり、避難所の収容能力が見込みより減少する。
・ また、避難スペースが天井等の非構造部材や設備の損壊等で使用不能となる。

◎ 避難所運営要員の被災 :
・ 被害の大きな地域では自治体職員や学校職員等が被災し、避難所の開設・運営に支障をきたす

◎ 通信機能の喪失 :
通信手段が被災し、避難者のいる場所・避難者数の確認、救援物資の内容・必要量の確認が困難となる。

◎ 避難所における医療救護活動 :
・ 避難者の中には負傷者も多く、避難者でもある医療関係者による看護や、医師の派遣による応急手当が実施される。
・ 避難所に避難した高齢者・身体障害者等の災害時要援護者に必要な医療・介護面のケアが行き渡らない事態が発生する。

◎ 屋外避難 :
・ 自宅に残った人、避難所等へ避難した人ともに、余震が怖い等の理由で屋外に避難する人が発生する(屋外避難者は人数が把握しづらくなるとともに、特に冬季は問題が深刻になる)。
・ 避難所には自動車による避難者も多く、学校等のグラウンドは自動車で満杯となる。

《概ね数日後~》

◎ 食料・物資の調達、配布不足:
・ 避難所において食料・救援物資等が不足する。

◎ 照明、冷暖房機能の喪失 :
停電が継続し、非常用発電機等がない避難所では夜間は真っ暗、また暖房・冷房が機能していない状況下で避難生活を余儀なくされる

◎ 飲料水、トイレ用水の不足 :
断水が継続し、飲料水の入手や水洗トイレの使用が困難となる。

◎ 感染症等の発生:
・ 冬は寒く風邪・インフルエンザ等が蔓延し、夏は暑く衛生上の問題が発生するなど、避難所での生活環境が悪化する。

◎ 屋外避難 :
・ 体育館等に入りきれない避難者は車内に寝泊りすること等により静脈血栓塞栓(エコノミークラス症候群)などで健康が悪化する。

◎ 避難所の開設・運営ノウハウを持つ人材の不足:
・ 避難所の把握や避難者ニーズの把握、食料・水の確保、入浴支援等の多くの支援を自衛隊やボランティア等に頼らざるを得ない状況となり、本来の活動内容である捜索・救助活動やがれき撤去、物資管理・配送等が遅延する。

◎ 避難所生活のルール、マナーの必要性 :
・ 発災当初はハネムーン現象により愛他的に接する人が多いが、日数が経過するにつれ、自分の家のように空間を独占する等の迷惑行為が発生する。
・ 食料・救援物資の配給ルールや場所取り等に起因する避難者同士のトラブルが発生する。
・ 過密な避難状況やプライバシーの欠如から、避難所からの退去や屋外避難する避難者が発生する。

◎ 遠隔地への広域避難 :
・ 津波により地区全体が被害を受ける、自宅建物が継続的に居住困難となる等の理由から従前の居住地域に住むことができなくなった人が、遠隔地の身寄りや他地域の公営住宅等に広域的に避難する。
・ 遠隔地に避難・疎開する避難者が中間地点の避難所に避難するため、他市区町村の情報を避難者に提供する必要が発生する。

◎ ペットの扱いに関するトラブル :
・ 避難所においてペットに関するトラブル等が発生する。
・ 広域避難等に伴い、ペット・家畜等を飼い続けることが困難となり、被災地等にペット等が多く残される

◎ 被災者による避難所の自主運営 :
避難所の運営は、発災直後は施設管理者(学校の場合は教職員等)が中心であるが、発災 3 日後程度以降から自治組織中心に移行する。
・ 時間が経過するとともに、徐々にボランティア等が疲労し、数自体も減少し、被災者自らによる自立した避難所運営が必要となる。
高齢者比率が特に高い地域や、複数地域から避難者が寄り集まっている避難所等では、自立のためのマンパワー確保や自治組織の形成が困難なために避難所自治が成り立たず、生活環境の悪化につながる。

◎ 遠避難所間の格差 :
自治体間や避難所間で、食事の配給回数やメニュー、救援物資の充実度等にばらつきや差が生じ始める
・ 交通機関途絶によるアクセス困難などから、ボランティアや救援物資に避難所間の格差が生じ、避難者に不満が発生する。

《概ね 1 ヶ月後~》

◎ 避難所、車中避難の長期化 :
ライフラインの復旧等の遅れに伴い、自宅建物に被害を受けていない住民であっても避難が継続される。
・ 長期間にわたる車中泊の避難者の中には静脈血栓塞栓症が発症する。

◎ 避難所の多様化 :
交通機関の部分復旧等に伴い、遠方の親族・知人等を頼った帰省・疎開行動が始まる
・ 特に、津波浸水地域を中心に避難所外への避難者比率が高まっていく。(約 270 万人~約 620 万人の避難所外避難者)
民間賃貸住宅への入居、勤務先提供施設への入居、屋外での避難生活(テント、車中等)等も見られる
・ 「自宅の様子が知りたい」「生活基盤のある土地から離れたくない」「子供を転校させたくない」「遠いと通勤・通学に時間がかかる」等の理由から、自宅近くの避難先を選択するケースも多く、居住地周辺の避難所避難者数が減少しない

◎ 避難生活の長期化化に伴う心身の健康不安 :
・ 避難所や避難所外への避難者だけではなく、在宅生活者においても、生活不活発病となる人が増加する。
・ 避難所で活動する職員やボランティアで、過労やストレスにより健康を害する人が発生する。
生活環境の変化・悪化・寒さ等により、高齢者等を中心に罹病、病状の悪化、不眠などの症状が発生する。
避難所におけるプライバシーの確保が困難となり、生活に支障をきたすとともに、精神的ダメージを受ける人も発生する。
水やトイレの使用等の制約が極限に達し、特に高齢者や障害者等の生活や健康に支障をきたす。
生活習慣の違いから、精神的ダメージを受ける人も発生する(外国人等)。

◎ 避難所内でのトラブル :
避難所の救援物資の大量持ち帰り、部外者の出入りや避難者の無断撮影、盗難等のトラブルが発生する。

◎ 避難者ニーズの変化 :
・ 避難所生活に慣れた頃から、配給された食事が冷たい、メニューが単調、温かい風呂に入りたい等、生活環境への不満が積もる
被災者のニーズは時々刻々と変化しモノ・情報の様々なニーズに対応しきれなくなる

◎ 避難所の解消の困難 :
・ 避難所生活が長期化し、避難所の解消が遅れる
・ 避難所となっている学校では授業再開に支障をきたす。

《さらに厳しい被害様相》

● より厳しいハザードの発生 ・ 強い揺れを伴う余震が断続的に長期間続く場合や、気象条件によっては、自宅等での生活に不安を感じ、避難所避難者が更に増加し、より避難生活が長期化する可能性がある。
● 被害拡大をもたらすその他の事象の発生 ・ 大規模な地盤沈下等に伴い広範囲にわたって湛水した場合、自宅で生活できない被災者が膨大な数に上る一方で、避難可能な施設が失われるために避難所が大幅に不足する。
● 災害応急対策の困難 ・ 行方不明者が多数発生し、捜索活動が継続されている地域においては、行方不明者(または、所持品等)を探し続ける遺族等が自宅跡近くの避難所等から移動せず、避難所の解消が大幅に遅れる。
● 二次的な波及の拡大 ・ 停電・断水・ガス供給停止・燃料不足が長期化した場合、トイレ等衛生環境の確保や調理の困難、また冷暖房の利用が困難となるために生活環境が極めて悪化し、高齢者等を中心に多数の震災関連死が発生する。

次回へ・・・。