「真実の口」2,125 能登半島地震 ⑩

前回の続き・・・。

「能登半島地震 ④ 」で、地震による陸地の隆起にを寄稿しているたが、その後の調査で、  4m の隆起能登半島の約 90km にわたって海岸線が前進し、輪島市門前町黒島町付近で最大約 240m の前進が確認されている。

1 月 11 日、産業技術総合研究所(以下、産総研)が発表した能登半島地震に伴う海岸の地殻変動の調査結果によると、石川県輪島市門前町鹿磯周辺では、最大で約 4m の隆起が確認されている。

能登半島地震に伴う海岸の地殻変動

産総研が鹿磯漁港を調べたところ、防潮堤壁面に付いたカキなどの生物が隆起によって水面から離れている様子が見られた。

壁面に付いた生物の高度から地震前のおおよその海面を予測できるため、これと地震後の海面を比較。複数地点で調べた結果、その差は 3.8 ~ 3.9m でほぼ報告通りの隆起を確認したとしている。

下の写真は、鹿磯漁港の防潮堤に付いた生物遺骸が示す隆起の様子で、人が持っている標尺の長さは 5m である。

鹿磯漁港の防潮堤に付いた生物遺骸が示す隆起の様子

鹿磯漁港からさらに北側を調べたところ「波食棚」という平たんな岩棚が、地震による隆起で干上がった様子が確認された。

「波食棚」の前方は崖になっており、地震後の海面との高さを比較すると約 3.6m の差が見られたという。

「波食棚」は本来、平均海面付近の高さに広がる地形であるが、今回の地震によって階段状の地形「海成段丘」を形成したことが分かったとしている。

下の写真が隆起した波食棚前面の崖の様子である。

隆起した波食棚前面の崖の様子

産総研によると、能登半島北部沿岸は約 6,000 年前以降に形成したと思われ、 3 段の海成段丘が分布してたが、今回の地震の影響で地面が隆起し、 4 段目の海成段丘を形成したことになるという。

今回の地震による隆起で形成した海成段丘の地形断面

ただ、約 6,000 年間に出来たとみられる 3 段の階段状の地形は、いずれも隆起の規模が 2 ~ 3m 程度とされており、今回の地震で出来た 4 段目の隆起量は過去最大の隆起である可能性が高いと言う。

産総研・地質調査総合センター:宍倉正展グループ長は、「海岸の隆起という現象を 30 年余り研究していますけれども、非常に私も驚きました。沖合で海底の断層がもしかしたら(さらに大きい) 6 ~ 7m といった、ずれができているのかもしれない。それが海岸に反映されると 4mぐらいになっているのかも・・・?」と語っている。

更に、この地殻変動による海岸の隆起の影響で、石川県の大きさが一時的に福井県を上回った可能性があることが分かった。

国土地理院によると、昨年 10 月 1 日時点の面積は石川県が 4,186.20Km2 、福井県が 4,190.54Km2 で、福井県の方が 4.34Km2 大きい。

日本地理学会の調査グループが地震前の国土地理院の地形図と地震後の衛星画像などを分析した結果、能登半島全域の調査範囲内で約 4.4Km2 の「陸化」が確認され、両県の面積の差をわずかに上回った可能性があるとしている。

同学会の後藤秀昭・広島大大学院准教授(地理学)によると、約 4.4Km2 は石川県中部にある河北潟ほどで「それなりの大きさ」といい、地震の規模を物語る。

河北潟

今後、海岸線は浸食により元の位置に戻ろうとし、陸化面積は今調査より小さくなる見通しらしい。

国土地理院の調査は満潮時に行うため、単純比較できないとしながら「日本列島は隆起、沈降が活発で、今回のような地震を繰り返して形成されてきた。歴史の一コマを見ているようだ」と指摘している。

歴史の一コマという言葉を災害に使うのは違和感を覚えるが、凄まじい自身のパワーが伺える現象であることはよくわかる。

更に、この地殻変動により、富山湾で「謎の津波」が確認されている。

能登半島地震で、富山湾で観測した津波が、震源から離れているにもかかわらず地震発生直後に到達していたことが、東北大学・今村文彦教授(津波工学)のチームから発表された。

気象庁によると、富山市で津波の第 1 波を観測したのは 1 日午後 4 時 13 分。

地震発生から 1 ~ 2 分後で、気象庁の到達予測より約 7 分早かった。

より震源に近い石川県の七尾港よりも 24 分先に到達していたことになる。

今村教授のチームが、国土地理院などの断層データをもとに能登半島地震の津波全体をシミュレーションしたところ、富山市への到達は約 5 分後と見込まれた。

富山湾の津波は、断層のずれだけでは説明できない現象だという。

富山湾では、地震直後から引き波が観測された。

このことから、地震の揺れに伴う海底地滑りが富山湾の津波を引き起こした可能性があると推察している。

富山湾の海底地すべりのイメージ

津波は海底地形の変動によって起きるため、海底の地滑りや山の崩落も原因となるらしい。

富山湾は水深が 1,000m 以上と深く、海底地形が急勾配になっていおり、富山沖には約16の海底谷があるとされる。

今村教授は「海底谷には河川からの土砂が堆積あいているとみられ、大きな揺れで崩れたのではないか」と語っている。

また、同様に、海上保安庁の測量船「昭洋」が 15 ~ 17 日、超音波を用いて海底地形を調査し、国土交通省が調べた 2010 年時点の地形と比べると、水深 260 ~ 330m 付近の海底で、約 50 万m3 (東京ドーム 4 個分)の土砂が崩れていることが確認できたらしい。

海上保安庁の担当者は「海底でこれほどの変化が起きるのは珍しく、能登半島地震で崩れた可能性がある」と説明。政府の地震調査委員会に報告する予定になっている。

地震による津波にも複数の様式があるということは、想像以上の速さで津波が到達るする地震に備えなければならないと言うことになるのではないだろうか?

次回へ・・・。