令和 8 年熊本地震が発生して、 1 ケ月が経過した。
熊本県はこの 1 ケ月間酷暑を極めた。
酷暑の中の災害関連死が心配されたが、今のところ災害関連死が増加と言うニュースは飛び込んでいない。
消防庁の発表( 8 月 23 日(日) 10 時 00 分発表)によると、死者は 38 人となっている。
内訳は、全て熊本県で、八代市 20 人、宇城市 3 人、嘉島町 7 人、甲佐町 1 人、氷川町 5 人である。
地震による死者は 1 人減り、車中泊での熱中症の疑いで亡くなった 1 人、災害との関連を調査中の 1 人が含まれている。
この数字は、地震発生から 1 週間で発表された数字と変わりがない。
2016 年熊本地震では、直接死が 50 人だったが、災害関連死は 218 人となっている。
災害関連死とはどのような死亡状況を指すのか?
『平成 28 年熊本地震関連死認定基準』
1. 「地震関連死」の認定
地震により、「死亡原因となった疾病」が発病(発症)し、又は悪化したことにより死亡したと認められる場合は、地震と死亡との間に因果関係があると判断し、「地震関連死」として認定する。
2. 地震と死亡との因果関係が認められる場合
( 1 ) 環境の激変次のような環境の激変があった場合に、地震と死亡との間に因果関係があると判断する。
① 医療機関の機能停止(転院を含む。)による初期治療の遅れ、治療(服薬を含む。)の中断及び既往症の悪化
② 交通事情等による治療の遅れ
③ 社会福祉施設等の介護機能の低下
④ 電気、ガス、水道等の途絶、避難所等生活の肉体的・精神的負担
⑤ 地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的負担⑥救助・救護活動等の激務
⑦ 多量の塵灰の吸引
( 2 ) 自殺
次のいずれの要件も満たすことにより地震による精神障害を発病(発症)し、又は悪化したと認められる者が自殺で亡くなった場合には、当該自殺について地震と死亡との間に因果関係があると判断する。
① 国際疾病分類第 10 回修正版に分類される精神障害が発病(発症)し、又は悪化していること。
② 地震による強い心理的負荷が認められ、地震後おおむね 6 ケ月の間に発病(発症)し、又は悪化していること。
③ 地震以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病(発症)し、又は悪化したとは認められないこと。
3. 地震と死亡との因果関係が認められない場合
次のような場合は、地震と死亡との間に因果関係がないと判断する。
( 1 ) 地震により、「死亡原因となった疾病」が発病(発症)し、又は悪化した後、疾病が改善した場合
( 2 ) 地震の前から重篤であった既住症が「死亡原因となった疾病」であり、地震により明らかに死期を早めたと医学的に判断できない場合
( 3 ) 地震後に地震とは別の原因で発病(発症)した疾病が原因で死亡した場合
( 4 ) 本人・家族等の対応により、「死亡原因となった疾病」が発病(発症)し、又は悪化した場合
( 5 ) 偶然による事故
《例》
・地震後に屋根の修理中に誤って転落して死亡
・地面の凹凸による転倒で死亡
4. 因果関係の判断にあたっての留意事項
( 1 )「地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的負担」については、「死亡原因となった疾病」への影響を医学的に判断する。
( 2 ) 疾病の改善」については、病状や生活環境等を勘案し、医学的に判断する。
( 3 ) 「死亡原因となった疾病」が肺炎、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、癌等の場合は、地震との関連を次のとおり判断する。
① もともとのハイリスク者(高血圧・高脂質・持病等)が、地震以外の要因により発病(発症)又は悪化した場合は、因果関係がないと判断する。
② 高齢等でもともと衰弱しており、地震がなくても同様の経過をたどったと考えられる場合は、因果関係がないと判断する。
( 4 ) 「本人・家族等の対応」について、次のような場合は、地震と死亡との間に因果関係がないと判断する。
① 本人・家族が、適切な医療を受ける必要性を認識し、適切な医療を受けることが可能であったにもかかわらず、医療を受けることを怠った場合②医療機関等が、必要な医療行為等適切な措置をとらないなど重大な過失が認められる場合(被災直後の医療機関等の機能停止の場合を除く。)
以上が 平成 28 年熊本地震の際の災害関連死認定基準である。
阪神大震災での災害関連死は地震発生から 2 ~ 3 週間後から発生したが、熊本地震では数日後に死者が出て、その後、急増している。
地震発生後最初の半月間( 15 日間) に限って余震発生状況を見てみると、熊本地震は約 3,000 回も起き、同じ内陸型地震の阪神大震災 230 回、新潟県中越地震 680 回と比べ、突出しているのが分かる。
多発する余震が怖くて屋内に入れないため車中泊をせざるを得ず、直後からエコノミークラス症候群を発症。
そして、心肺停止状態などで病院搬送される人が目立ったようだ。
★ 性別・男女比を見てみみると、若干男性が多くなっている。
・ 男性: 115 人( 52.8% )
・ 女性: 103 人( 47.2% )
➡ 合計: 218 人
★ 既往症の有無を見てみると、何らかの既往症があった方が、約 9 割となっている。
・ あり: 190 人( 87.2% )
※ 具体的な病名が記載されている方に加え、要介護認定を受けている方や薬を服用している方等を含む。
・ なし: 21 人( 9.6% )
・ 不明: 7 人( 3.2% )
➡ 合計: 218 人
★ 死亡時の年代を見てみると、 70 代以上の方が 169 人で、災害時に支援を要する高齢者が全体の約 8 割を占めている。
・10 歳未満: 2 人( 0.9% )
・10 代: 1人 ( 0.5% )
・20 代: 0 人( 0% )
・30 代: 4 人( 1.8% )
・40 代: 2 人( 0.9% )
・50 代: 9 人( 4.1% )
・60 代: 31 人( 14.2% )
・70 代: 46 人( 21.1% )
・80 代: 75 人( 34.4% )
・90 代: 45 人( 20.6% )
・100 歳以上: 3 人( 1.4% )
➡ 合計: 218 人
★ 地震発生から死亡までの期間を見てみると、 3 ヶ月以内に亡くなられた方が 177 人で、全体の約 8 割を占めている。
・ 1 週間以内( H28.4/14 ~ 4/21 ): 53 人( 24.3% )
・ 1 ケ月以内( H28.4/22 ~ 5/13 ): 71 人( 53.6% )
・ 3 ケ月以内( H28.5/14 ~ 7/13 ): 53 人(24.3% )
・ 6 ケ月以内( H28.7/14 ~ 10/13 ): 27 人( 12.4% )
・ 1 年以内( H28.10/14 ~ H29.4/13 ): 9 人( 4.1% )
・ 1 年以上( H29.4/14 以降 ): 5 人( 2.3% )
➡ 合計: 218 人
★ 事案別原因(複数選択)を見てみると・・・。
・ 地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的負担: 111 人( 40.0% )
・ 避難所等生活の肉体的・精神的負担: 81 人( 28.9% )
・ 医療機関の機機能停止等(転院を含む)による初期治療の遅れ(既往症の悪化及び疾病の発症を含む): 46 人( 16.4% )
・ 電気、ガス、水道等の途絶による肉体的・精神的負担: 14 人( 5.0% )
・ 社会福祉施設等の介護機能の低下: 9 人( 3.2% )
・ 交通通事情等による治療の遅れ: 2 人 ( 0.7% )
・ 多量の塵灰の吸引: 1 人 ( 0.4% )
・ その他(倒壊した家屋による外傷など): 15 人 ( 5.4% )
➡ 合計: 280 人
★ 死亡時の生活環境等区分別・死亡(搬送)前の生活環境は、「病院」に入院中や入院後に亡くなられた方が 85 人と最も多く、全体の約 4 割を占めており、続いて、発災前から生活していた「自宅等」が 81 人となっている。
・ 発災前と同じ居場所に滞在中の場合
→ 自宅等: 81 人( 37.2%)
→ 病院: 27 人( 12.4% )
→ 介護施設: 17 人( 7.8% )
・ 入院又は入所後、 1 ヶ月以上経過し亡くなった場合
→ 病院: 58 人( 26.6% )
→ 介護施設等: 3 人( 1.4% )
・発災時にいた場所及びその周辺: 12 人( 5.5% )
・ 避難所等への移動中: 0 人( 0.0% )
・ 避難所滞在中: 10 人( 4.6% )
・ 仮設住宅滞在中: 1 人( 0.5% )
・ 民間賃貸住宅・公営住宅等滞在中 0 人( 0.0% )
・ 親戚や知人の家に滞在中 8 人( 3.7% )
・ その他・不明: 1 人( 0.5% )
➡ 合計: 218 人
★ 死因を見てみると、「呼吸器系の疾患」や「循環器系の疾患」で亡くなられた方 123 人で、全体の約 6 割を占めている。
・ 呼吸器系の疾患(肺炎、気管支炎など): 63 人( 28.9% )
・ 循環器系の疾患(心不全、くも膜下出血など): 60 人( 27.5% )
・ 内因性の急死、突然死等: 29 人(13.3% )
・ 自殺: 19 人( 8.7% )
・ 感染症(敗血症など): 14 人( 6.4% )
・ 腎尿路生殖器系疾患(腎不全など): 7 人( 3.2% )
・ 消化器系疾患(肝不全など): 4 人( 1.8% )
・ その他(アナフィラキシーショック、出血性ショックなど): 22 人( 10.1% )
➡ 合計: 218 人
これだけのデータが収集されている。
平成 28 年度熊本地震の時のような悲劇を繰り返してはならない。
被害に遭われた方々の平穏な日々が早く取り戻せることを切に願う。











