前回の続き・・・。
遺伝子組み換え作物の代表的企業であるモンサント社は、これまで、農家を相手に言いがかりのような数々の訴訟を行ない、莫大な資金をバックに、勝訴を重ねてきた。
中でも、 2013 年に結審された『遺伝子組み換え作物特許権侵害訴訟』は全米を揺るがすほどの判決だった。
この裁判は、モンサント社が、インディアナ州で農業を営むバウマン氏に対して、業者が育てた大豆を購入し、それを種子にして大豆を栽培することが自社の特許を侵害するとして訴訟を提起したものである。
改めてだが、モンサント社について、少し触れておこう。
モンサント社は、米・ミズーリ州に本社を置く(当時)遺伝子組み換え作物( Genetically Modified Organism、以下:遺伝子組み換え作物のことを頭文字を取って“ GMO ”と略す)の世界シェアの実に 9 割をも占める企業である。
今回問題となった対象製品は、遺伝子組み換え作物のうちの、「ラウンドアップ・レディー大豆( Roundup Ready Soybean )」という大豆である。
「ラウンドアップ・レディー」とは、モンサント社が自ら開発したグリフォセートを有効成分とする除草剤「ラウンドアップ」の耐性ができるように遺伝子を組み替えた作物のことである。
つまり、モンサント社は自社で除草剤を作り、さらにその除草剤に耐えられる大豆をも自社で作っているのである。
そして、当然ながら、モンサント社はこの「ラウンドアップ・レディー」に関する遺伝子の特許を有している。
一方、提訴されたバウマン氏は、何故、訴えられたのか?
「ラウンドアップ・レディー大豆」を、栽培しようとするとき、農家はモンサント社のライセンスを受けた種子生産業者から種子としての大豆を購入することになる・・・・・・〆(・。・〟)
ただ、購入に際して、モンサント社はあるライセンス条件を定めている・・・φ(*’д’* )メモメモ
「その種子から“ 1 回だけ”作付け・収穫することができ、収穫した大豆は消費するか食用または飼料として販売することはできる。収穫した大豆を基に“再度栽培してはいけない”。」
これは、モンサント社ホームページにも、条件があることが明記されているらしい・・・(・、・)フーン
因みに、「ラウンドアップ・レディー大豆」は、遺伝子を組み換えた結果備わる除草剤への耐性なので、第 2 世代以降も「ラウンドアップ・レディー大豆」が誕生する・・・(*・ω・) ウンウン♪(*-ω-)ソリャソウカ♬
バウマン氏は、毎シーズン 1 回目の作付け用には、ラウンドアップ・レディー大豆の種子をモンサント社から購入していた・・・φ(*’д’* )メモメモ
しかし、シーズン 2 回目の作付けに関しては、大豆を第三者から購入してきて、そこから作付けをしていたそうだ・・・ゥ─σ(・´ω・`*)─ン…
バウマン氏が、シーズン 2 回目の作付けにこのようなことをしたかというと、 2 回目の作付けは、リスクが高く、コスト削減のために、高い種子を避けたということだった・・・ポンッ☆_o(´д゚〃)ナットク☆♪
モンサント社から種子として購入するよりも、業者の商品の方が安く購入できるそうなのだ・・・。
そこで、モンサント社は、シーズン 2 回目のこのような作付け行為について、特許権侵害であると訴えたのだ・・・Σ(T□T) アチャー
アメリカの地裁は、バウマン氏にモンサント社への 84456.20ドルの損害賠償を認める判決を下した・・・(●´д`●)マヂカョ・・・
連邦巡回区控訴裁判所も、地裁判決を支持した・・・Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン
2013 年 5 月 13 日
アメリカ連邦最高裁も、全員一致でモンサント社の請求を認め、バウマン氏が特許権侵害をしたと判断された・・・il||li _| ̄|○ il||li
この事件は、法律的には、自己増殖する種子の栽培で「特許権の消尽」が認められるかという点で争われたようだ。
消尽・・・???
Wikipediaより
『知的財産法において、知的財産権の消尽(しょうじん)とは、ある物について権利者が知的財産権を一度行使することによって、その知的財産権がその物については目的を達成して尽き、権利者がもう一度知的財産権を行使することができない状態になることをいう。
例えば特許権者は、業として特許製品を製造、使用、販売する権利を専有する。これを文言どおりに解釈すると、特許権者が製造販売した特許製品であっても、その使用や転売には一々特許権者の許諾が必要となる。特許権者によって適正に製造販売された特許製品の使用や転売に際して許諾という煩雑な手続を要求することは、特許製品の利用や商取引の妨げとなり、不合理である。そこで、特許権者によって適正に製造販売された特許製品については、使用や転売に許諾が必要でないことを説明するための理論が必要となる。
特許権に限らず、知的財産権一般に関して、権利者によって適正に拡布された物については、使用や転売に許諾が必要でないことを説明するための理論が必要となる。消尽理論はそのための理論の一つである。』
専門的過ぎて、分からないので、専門家である弁護士の解説を加えると・・・。
消尽理論があるのかというと、特許権者は、適法に販売された特許製品からは既にロイヤルティを取得しているため、その使用や再販売については特許権者に別途ロイヤルティが支払われなくても(特許権が及ばなくても)問題ないためらしい・・・。
他方、新しく生産された特許製品の場合、特許権者はロイヤルティが支払われていないため、このような製品についても特許権者にロイヤルティを獲得する機会を与えるべく、消尽は及ばないとされるのだ。
もし、仮に、特許製品から新しく生産されたものに特許権が及ばないとなると、1回購入したら永遠に再生産が可能となり、特許権者にとって十分なロイヤルティ収入などが期待できなくなってしまうかららしい・・・。
声:「何となくわかったような、分かっていないような・・・(笑)。」
結局、判決では、バウマン氏の行為は、本来飼料等になるべき収穫物としての大豆を購入し、それを種子としてラウンドアップ・レディー大豆を栽培し、固体数を増やしたものであるから、まさに「特許発明を実施した大豆を再生産する」行為であり、特許権の消尽理論の適用はない、つまり特許権侵害になるとされたのである。
これに対し、バウマン氏側は、「確かに私は特許製品から生産された大豆を購入した。ただ、その大豆を通常の用法で栽培しているだけである。特許権の消尽とは、適法に販売された特許製品の『使用』は自由であるとする理論であるから、通常の用法で栽培していることについても特許権の消尽の適用があるはずだ。」と反論したそうだ。
しかし、上で解説したように、例え、適法に販売されたものであるとしても、その再生産に特許権が及ばないとするとたった 1 回の取引で特許権が消滅してしまうことになり、特許権が認めた「20年間の独占期間」は空論になりかねず、“発明への見返り”を損ねる可能性があるとしたのである。
さらに、バウマン氏は、上記に加えて「大豆は自然に発芽し、自己増殖するものである。だから、『作付けされた大豆』自身が再生産したのであり私が大豆を再生産したのではない。」という反論もしたそうなのだが・・・。
声:「なかなか笑える(笑)。」
残念ながら、この主張も認められなかったようだ・・・。
判決では、バウマン氏は、ラウンドアップ・レディー大豆が含まれていると予期して大穀物倉庫から大豆を購入し、その中からラウンドアップ・レディー大豆を選んで栽培をした上で、さらに次の栽培のために貯蔵し、これに別途購入してきた収穫物としての大豆を追加しながら栽培し続け、 8 世代も再生産していたのだから、大豆の再生産をコントロールしているのは、「大豆自身」ではなく、バウマン氏であるとされたのである。
声:「 8 世代も再生産しておいて、『大豆は自然に発芽し、自己増殖したものであり、私が大豆を再生産したのではない。』・・・て、よく言うわ(笑)。」
以上のように、バウマン氏はモンサント社の特許を使用した大豆を再生産しているとして特許権の消尽は認められないとして、モンサント社の特許権侵害とされたのである。
当時の報道によると、 2013 年初頭において 446 もの農家等に対して144 の訴訟を提起していたようだ・・・。
https://www.theguardian.com/environment/2013/may/13/supreme-court-monsanto-indiana-soybean-seeds
次回へ・・・。