前回の続き・・・。
前回は、 12 月 3 日(金)に開催された合同部会の“アナフィラキシー事例”を取り上げたが、今回は、“心筋炎”及び“血小板減少症を伴う血栓症( TTS )”について寄稿する。
〇 対象期間( 11 月 14 日)までに、ファイザー社ワクチンについて、 281 件( 100 万回接種あたり 1.7 件)、武田/モデルナ社ワクチンについて 195 件( 100 万回接種あたり 6.1 件)の報告があった。
〇 アストラゼネカ社ワクチンについて疑い報告は無かった。
〇 ファイザー社ワクチン、武田/モデルナ社ワクチンいずれも 2 回接種後の若年男性で報告頻度が高いことが示唆され、国内外の報告状況を踏まえ、添付文書において重大な副反応に位置付けられるとともに、副反応疑い報告基準へ追加された。
〇 今後、調査票に基づくブライトン分類評価も踏まえ、さらなる分析が行われることとなった。
〇 10 代及び 20 代の男性については、ファイザー社ワクチンに比べて武田/モデルナ社ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎が疑われる報告頻度が明らかに高いことから、重症例や予後不良例などについても注視しながら、十分な情報提供の上、引き続きファイザー社ワクチンの接種も選択できることとなった。
〇 引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められず、今後も報告状況を注視し、最新情報の周知及び注意喚起を行っていくこととされた。
≪心筋炎関連症例≫
【ファイザー社製】
1.報告状況
○ ファイザー社ワクチン接種後の心筋炎関連事象(心筋炎・心膜炎)疑いとして、前回の集計対象期間( 10 月 24 日)以降、製造販売業者から新たに 71 例の報告があり、計 281 例となった。
2. 死亡事例
○ 前回の集計対象期間( 10 月 24 日)以降、製造販売業者から新たに 16 例の報告があり、計 42 例となった。
前回報告分は以下を参照。
No. | 年齢 | 性別 | 接種日 | 発生日 | 接種回数 | ロット番号 |
---|---|---|---|---|---|---|
11833 | 72 | 女 | 5/31 | 未記入 | 1回目 | EY4834 |
15390 | 85 | 男 | 6/8 | 6/19 | 1回目 | EY5432 |
19189 | 76 | 男 | 7/17 | 7/19 | 2回目 | FC3661 |
19232 | 71 | 男 | 6/16 | 6/25 | 1回目 | EY0779 |
19247 | 84 | 男 | 6/25 | 6/26 | 1回目 | FC5295 |
20379 | 85 | 女 | 6/29 | 7/24 | 2回目 | 不明 |
23183 | 27 | 男 | 9/5 | 9/21 | 1回目 | 不明 |
23758 | 71 | 男 | 7/8 | 7/8 | 1回目 | FC8736 |
23889 | 72 | 女 | 8/25 | 8/25 | 1回目 | FC9942 |
22967 | 43 | 男 | 8/30 | 9/8 | 2回目 | FF0843 |
24040 | 47 | 女 | 8/31 | 9/5 | 2回目 | FF3622 |
24766 | 35 | 男 | 9/29 | 10/2 | 2回目 | FF9944 |
25017 | 34 | 男 | 10/5 | 10/8 | 2回目 | 不明 |
25296 | 36 | 男 | 8/28 | 8/31 | 2回目 | FF9944 |
29080 | 24 | 男 | 8/14 | 未記入 | 2回目 | 不明 |
29108 | 43 | 男 | 8/19 | 9/30 | 2回目 | 不明 |
★男女比は・・・。
男性: 14 ➡ 26 ( +12 )人
女性: 12 ➡ 16 ( +4 )人
★年齢構成は・・・。
10 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
20 代・・・ 2 ➡ 4 ( +2 )人
30 代・・・ 0 ➡ 3 (+3 )人
40 代・・・ 5 ➡ 8 ( +3 )人
50 代・・・ 1 ➡ 1 ( ±0 )人
60 代・・・ 2 ➡ 2 ( ±0 )人
70 代・・・ 9 ➡ 14 ( +5 )人
80 代・・・ 7 ➡ 10 ( +3 ) 人
90 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
100 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
★接種回数は・・・。
1 回目: 15 ➡ 22 ( +7 )人
2 回目: 11 ➡ 20 ( +9 )人
【モデルナ社製】
1. 報告状況
○ 武田/モデルナ社ワクチン接種後の心筋炎関連事象疑いとして、接種開始から 11 月 14 日までに製造販売業者から新たに 43 例の報告があり、計 195 例となった。
2. 死亡事例
○ 前回の集計対象期間( 10 月 24 日)以降、製造販売業者から新たに 5 例の報告があり、計 9 例となった。
No. | 年齢 | 性別 | 接種日 | 発生日 | 接種回数 | ロット番号 |
---|---|---|---|---|---|---|
16240 | 27 | 男 | 6/28 | 7/6 | 1回目 | 不明 |
17843 | 45 | 男 | 8/29 | 未記入 | 1回目 | 不明 |
17872(※注) | 24 | 男 | 7/17 | 未記入 | 1回目 | 不明 |
〃 | 〃 | 〃 | 8/14 | 未記入 | 2回目 | 不明 |
17899(※注) | 43 | 男 | 7/22 | 9/30 | 1回目 | 不明 |
〃 | 〃 | 〃 | 8/19 | 9/30 | 2回目 | 不明 |
18042(※注) | 22 | 男 | 9/8 | 未記入 | 1回目 | 3005693 |
〃 | 〃 | 〃 | 10/6 | 10/6 | 2回目 | 3005839 |
(※注) 1 回目接種時、 2 回目接種時ともに心筋炎発生。
★男女比は・・・。
・男性: 4 ➡ 9 ( +5 )人
・女性: 0 ➡ 0 ( ±0 )人
★年齢構成は・・・。
10 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
20 代・・・ 4 ➡ 7 ( +3 )人
30 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
40 代・・・ 4 ➡ 6 ( +2 )人
50 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
60 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
70 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
80 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
90 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
100 代・・・ 0 ➡ 0 ( ±0 )人
≪ワクチン接種後の心筋炎関連事象に係る臨床的経過について≫
○ ワクチン接種後の心筋炎関連事象については、若年男性において因果関係が疑われている一方、発症しても軽症であることが多いとされている。
○ 11 月 14 日までに製造販売業者より報告された 10 代~ 30 代の男性事例の最新の転帰については、以下のとおりであった。
○ 心筋炎関連事象疑いとして製造販売業者より報告された 10 代~ 30 代の男性において、転帰が確認された者のうち軽快または回復が確認された者の割合は、ファイザー社ワクチン 86% (前回比 +2% )、武田/モデルナ社ワクチン 85% (前回比 -3% )であった。
≪心筋炎関連事象についてのまとめ ≫
○ 個別の事例としての分析に関しては、国内で報告があった心筋炎関連事象に係る副反応疑い報告事例について、現時点においては引き続き、専門家評価により「因果関係が否定できない」とされた事例はない。
○ 集団としての分析に関しては、以下の状況が認められる。
i. COVID-19 感染症により心筋炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率と比較して高い。
ii. 新型コロナワクチン接種後の心筋炎については、国内外において、若年男性で2回目接種後 4 日以内の発症報告が多い。国内の最新の報告状況に基づく O/E 解析においても、ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチンともに 10 歳代及び 20 歳代の男性については一般人口と比較して報告頻度は高く、 30 歳代の男性については一部の解析条件において報告頻度が高かった。一方、 40 歳代以上の男性及び全年代の女性については、一般人口と比較して差は認められなかった。
iii. ワクチン間の被接種者の属性が異なることに留意が必要であるが、 10 歳代及び 20 歳代男性については、ファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高い。
iv. 心筋炎関連事象疑い事例の死亡については、ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチンともに報告頻度は稀ではあるものの、特に若年者については一般人口と比べて高い可能性がある。一方、若年者の死亡全体の報告頻度は一般人口と比べて低かった。
○ 心筋炎関連事象の転帰は、発症しても軽症であることが多いとされている。国内で報告があった若年男性の事例では、死亡例や重症例も報告されているが、引き続き、転帰が確認可能であった多くの事例で、軽快又は回復が確認されている。
≪ワクチン接種後の心筋炎関連事象に関するまとめ≫
○ 10 歳代及び 20 歳代の男性については、ファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の心筋炎関連事象が疑われる報告頻度が明らかに高いことから、十分な情報提供の上、ファイザー社ワクチンの接種も選択できることとする。また、本人がモデルナ社ワクチンの接種を希望する場合は、 COVID-19 感染症に合併する心筋炎関連事象の発生頻度よりは低く、若年の年代別の死亡全体の報告頻度について一般人口と比べて低いことも踏まえ、接種可能のままとする。
○ ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチンともに、 30 歳代の男性については引き続き注視が必要な状況であるが、 40 歳代以上の男性及び全年代の女性については一般人口と比較して差は認められない。
○ 調査票に基づくブライトン分類の評価も踏まえ、今後さらなる評価・分析を行っていくとともに、海外における報告状況も注視していく。引き続き、最新の情報を周知するとともに、接種後には無理をせず、胸痛等の症状出現時には早期の受診を勧めるなどの注意喚起を行う。また、重症例や予後不良例などについて引き続き情報収集を行い、必要に応じ、審議会で柔軟に検討していく。
○ 年齢・性別別の報告頻度に係る解析結果を踏まえ、引き続き、若年男性も含めて、ワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められな
いと考えてよいか。
≪血小板減少症を伴う血栓症( TTS )≫
【ファイザー社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 10 月 24 日)以降、コミナティ筋注の副反応疑い報告において、製造販売業者から血栓症(血栓塞栓症を含む/血小板減少症を伴うものに限る)( TTS )疑いとして報告された事例が新たに 7 件あり、令和 3 年 8 月 3 日から令和 3 年 11 月 14 日までに報告された TTS 疑い事例は計 46 件となった。
2. 専門家の評価
○ 令和 3 年 11 月 14 日までに報告された 46 事例を対象に、専門家の評価を実施。
○ 「ブライトン分類」での評価は、 46 事例中、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 16 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 16 件/ 73,664,840 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 0.2 件
【モデルナ社製】
1. 報告状況
○ 前回の集計対象期間( 10 月 24 日)以降、 COVID-19 ワクチンモデルナ筋注の副反応疑い報告において、製造販売業者から血栓症(血栓塞栓症を含む・血小板減少症を伴うものに限る)( TTS )疑いとして報告された事例が新たに 1 件あり、令和 3 年 8 月 3 日から令和 3 年 11 月 14 日までに報告された TTS 疑い事例は計 4 件となった。
2. 専門家の評価
○ 令和 3 年 11 月 14 日までに報告された 4 事例を対象に、専門家の評価を実施。
○ 「ブライトン分類」での評価は、 4 事例中、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 3 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 3 件/ 20,404,901 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 0.1 件
【アストラゼネカ社製】
1. 報告状況
○ 前回の集計対象期間( 10 月 31 日)以降、バキスゼブリア筋注の副反応疑い報告において、医療機関から血栓症(血栓塞栓症を含む・血小板減少症を伴うものに限る)( TTS )疑いとして報告された事例はなく、令和 3 年 8 月 3 日から令和 3 年 11 月 21 日までに報告された TTS 疑い事例は新たな報告は無く、計 1 件のままである。
2. 専門家の評価
○ 令和 3 年 10 月 31 日までに報告された 1 事例を対象に、専門家の評価を実施。
○「ブライトン分類」での評価は、 1 事例中、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 1 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 1 件/ 108,032 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 9 件
≪血小板減少症を伴う血栓症についてのまとめ≫
○ 血小板減少症を伴う血栓症については、副反応疑い報告基準を設定し、新型コロナワクチン接種後の発生状況を注視している。
○ 国内の報告事例については専門家評価を行っており、ファイザー社ワクチンについては 16 件、モデルナ社ワクチンについては 3 件、アストラゼネカ社ワクチンについては 1 件が、国際的な基準(ブライトン分類)に基づき血小板減少症を伴う血栓症と評価された。
≪ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症に関する論点のまとめ≫
○ 血小板減少を伴う血栓症の症状としては、ワクチン接種後 4 ~ 28 日程度の間に、重度もしくは持続的な頭痛等の症状が出現すると想定されることから、こうした症状が現れた場合は医療機関を受診することを Web サイト( Q&A )や添付文書等において注意喚起を行っている。
○ 引き続き、国内の接種状況を踏まえつつ、国内の血小板減少を伴う血栓症を疑う報告の状況や海外における報告状況を注視していくとともに、最新の情報の周知及び注意喚起を行っていく。
○ 血小板減少を伴う血栓症については、現時点においては、引き続きワクチンの接種体制に直ちに影響を与える程度の重大な懸念は認められない。
次回へ・・・。