「真実の口」2,077 ‟がん”という病 ㉔~造血幹細胞移植編(その3)~

前回の続き・・・。

《造血幹細胞移植の治療の流れ》

1⃣ 治療の流れ

‟造血幹細胞移植”の約 1 週間前より、大量化学療法や全身放射線照射からなる「移植前処置」という治療を行う。

移植前処置は、腫瘍細胞を減少させ、患者自身の免疫細胞を抑制することを目的とする。

・移植当日は、あらかじめ採取しておいた造血幹細胞を静脈から投与する「輸注」を行う。

・移植した幹細胞が血液の流れに乗って骨髄にたどり着き、そこで増殖を始め、白血球数がふえてくることを「生着」と呼ぶ。

移植前処置の強度などによって異なるが、移植から約 1 ~ 数ケ月でドナーの血液に置き換わる。

・移植後数週間は、「クリーンルーム」「移植病室」と呼ばれる防護環境が保たれる病室で過ごす。

・これらの病室は、特別な空調設備(ヘパフィルター) を使用してきれいな空気を循環させている。

自家造血幹細胞移植(自家移植)の場合は、白血球減少期間が比較的短く免疫抑制剤が投与されないため、一般病室で治療を行うこともある。

生着が確認されると、防護環境から出て一般病棟で生活することができる。

・感染症などの合併症が軽快し、食事が摂取できるようになり、リハビリが進めば退院が可能となる。

・移植後も、再発移植片対宿主病( GVHD )や感染症などさまざまな合併症に注意しながら、定期的な通院が必要である。

【造血幹細胞移植の流れ】
造血幹細胞移植の流れ

2⃣ 移植前処置

移植前処置とは、移植の準備のために行う大量化学療法や全身への放射線治療などを組み合わせた治療のことで、移植当日の約 1 週間前から行われる。

ⅰ ) 目的

・腫瘍細胞をできるかぎり減少させる。

同種移植の場合は、患者自身の免疫細胞を十分に抑制し、移植したドナー幹細胞の拒絶を予防する。

ⅱ ) 方法

自家移植では大量化学療法を行い、同種移植では大量化学療法と全身放射線治療などを組み合わせて行う。

移植前処置の内容、すなわち薬剤の種類や量、放射線の照射量は、病気の種類や残存状態、移植する造血幹細胞の種類、患者の年齢や全身状態によって異なる。

同種移植の場合は、移植前処置の強さを弱めて行う「骨髄非破壊的移植(ミニ移植)」が行われることもある。

ⅲ ) 副作用

移植前処置では、大量の抗がん剤投与や全身放射線治療などにより、通常の化学療法や放射線治療よりも強い副作用が起こる。

・一時的に白血球が極度に減少するため、感染が起こりやすい状態となる。

・同時に赤血球や血小板も減少するため、貧血や出血を予防するために、適宜、赤血球や血小板輸血を行う。

・実施する移植前処置の内容によって異なるが、その他には、口内炎、脱毛、食思不振、嘔気・嘔吐、下痢などが高頻度に起こり、肝臓、腎臓、心臓、肺、中枢神経などの重要な臓器に障害が起こることもある。

・いずれの合併症も重症化した場合には命に関わることがある。

3⃣ 造血幹細胞の投与(輸注)

・移植は、造血幹細胞の含まれた細胞液を、輸血のように静脈から点滴で投与して行い、これを輸注という。

造血幹細胞の種類によって投与量や投与時間が異なる。

・副作用として、一時的に発熱やアレルギー反応が起こることがあるため、予防的に抗ヒスタミン薬やステロイドを投与する。

4⃣ 生着

・移植した造血幹細胞が骨髄で白血球を作り出すまでには時間がかかるため、移植前処置により白血球数がゼロとなった状態が数週間続く。

・この期間をなるべく短くするため、 G-CSF (顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を使用する。

・好中球数が 500/μL 以上となり、それが 3 日以上続くことを「生着」と呼ぶ。

・赤血球や血小板の増加がみられれば、輸血が不要になる。

・好中球生着に要する期間は、末梢血幹細胞移植では 10 ~ 14 日間程度骨髄移植では 2 ~ 3 週間程度臍帯血移植では 3 ~ 4 週間程度である。

5⃣ 再発

‟造血幹細胞移植”の効果により寛解(※注 1 )あるいは治癒と判断されたあとでも、白血病やリンパ腫などのもともとの疾患が「再発」・「再燃」することがある。

(※注 1 ) 一時的あるいは永続的に、‟がん”が縮小または消失している状態のことで、寛解に至っても、‟がん”細胞が再びふえ始めたり、残っていた‟がん”細胞が別の部位に転移したりする可能性があるため、寛解の状態が続くようにさらに治療を継続することもある。

再発時の治療方針は、患者個々の状況によって異なる。

・病状の改善を目指すために、多くの場合、初発時に行ったような多剤併用化学療法放射線照射による強力な治療が必要になる。

・完治を目指し、再度、‟造血幹細胞移植”(再移植)を行うこともある。

・一部の疾患では、ドナーリンパ球輸注( DLI )(※注 2 )により長期間の寛解が得られることもある。

(※注 2 ) 造血幹細胞を提供したドナーからリンパ球を改めて採取し、患者に投与する治療法のこと。

・完治が期待できない場合には、クオリティ・オブ・ライフ( QOL :生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した緩和的治療を行う。

再発時の治療方針はさまざまなので、どの方法を選ぶかよく相談する必要がある。

6⃣ ドナーリンパ球輸注( DLI )

・ドナーのリンパ球は献血と同じように、全血採血または成分採血で採取する。

DLI の適応は、 T 細胞残存による生着不全のほか、同種移植後の白血病の再発時、移植後に EB ウィルス(※注 3 )による B リンパ球増殖性疾患などの重症ウィルス感染症を来した場合などに考慮される。

(※注 3 ) ヘルペスウィルスのひとつで、大部分の日本人は、乳幼児期に感染し、多くは症状が出ないため感染に気付かない。思春期以降に初めて感染すると、伝染性単核球症と呼ばれる発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れなどの症状が一時的にみられることがあり、また、 EB ウィルスは、バーキットリンパ腫など一部の悪性リンパ腫や、上咽頭がんの発生と関連があることが明らかになっている。

生着不全に対して行われる際は、患者の骨髄を検査し、骨髄球系細胞が完全にドナー由来であるのに、白血球の中の T 細胞に患者自身のものが残っている場合に考慮される。

・ドナーのリンパ球を輸注することによって、血球の増加を妨げている患者由来の T 細胞を排除し、正常な造血機能の回復に導くことを期待して行う。

次回へ・・・。