前回の続き・・・。
5 月 13 日(金)に、第 79 回・厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和 4 年度第 3 回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)が開催された。
今回は、“アナフィラキシー事例”を寄稿する。
≪アナフィラキシー報告事例≫
【ファイザー社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 3 月 20 日)以降、コミナティ筋注の副反応疑い報告において、製造販売業者からアナフィラキシーとして報告された事例が新たに 22 件増加し(うち、 3 回目接種後の事例は 15 件)あり、令和 3 年 2 月 17 日から令和 4 年 4 月 17 日までに報告されたアナフィラキシー事例は計 3,230 件(うち、 3 回目接種後の事例は 70 件)となった。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 4 月 17 日までに報告された 3,230 事例を対象に、専門家の評価を実施。
○ 評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 120(+1) | 91(±0) | 27(±0) | 2(+1) |
2 | 471(+3) | 342(+1) | 123(±0) | 6(+2) |
3 | 24(±0) | 21(±0) | 3(±0) | 0(±0) |
4 | 2,511(+16) | 1,793(+2) | 657(+3) | 61(+11) |
5 | 104(+2) | 69(±0) | 34(+1) | 1(+1) |
合計 | 3,230(+22) | 2,316(+3) | 844(+4) | 70(+15) |
○アナフィラキシーの症例定義として国際的な指標になっている「ブライトン分類」での評価は、 3,230 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 615 ( +4 ) 例となっている。
●レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数注・・・615 件/ 205,121,596 回接種
● 100 万回あたりの報告件数・・・ 3.0 件
○ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数も見てみる。
年齢(歳) | 報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 性別不明 | ||
0~4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
5~9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
10~14 | 4 | 2 | 2 | 0 |
15~19 | 13 | 6 | 7 | 0 |
20~24 | 46 | 11 | 34 | 1 |
25~29 | 52(+1) | 6 | 46(+1) | 0 |
30~34 | 59(+2) | 13(+1) | 46(+1) | 0 |
35~39 | 83 | 8 | 75 | 0 |
40~44 | 82 | 9 | 73 | 0 |
45~49 | 94 | 8 | 86 | 0 |
50~54 | 56 | 2 | 54 | 0 |
55~59 | 43 | 5 | 38 | 0 |
60~64 | 19 | 1 | 18 | 0 |
65~69 | 25 | 6 | 19 | 0 |
70~74 | 13(+1) | 5(+1) | 8 | 0 |
75~79 | 4 | 0 | 4 | 0 |
80歳以上 | 20 | 2 | 18 | 0 |
不明 | 2 | 1 | 1 | 0 |
合計 | 615(+4) | 85(+2) | 529(+2) | 1 |
(参考) 65歳以上 |
62(+1) | 13(+1) | 49 | 0 |
(参考) 12~17 |
9 | 5 | 4 | 0 |
(参考) 18~24 |
54 | 14 | 39 | 1 |
前回から、増減の箇所だけ色を変えている。
表から見て取れることは・・・。
【年齢】
65 歳未満・・・ 553 ( +3 )例
65 歳以上・・・ 62 ( +1 )例
〔考察〕 前回同様、アナフィラキシー事例のうち 7 割近くが 3 回目接取時に起きていることを考えると、 1 ・ 2 回目時よりは確率が上がっていることになる。また、今回から、 12 ~ 17 歳及び 18 ~ 24 歳の集計が報告されるようになったので注視したほうが良いかもしれない。
【性別】
男性・・・ 85 ( +2 )例
女性・・・ 529 ( +2 )例
性別不明・・・ 1 ( ±0 )
〔考察〕 ファイザー社の報告通り、副反応は圧倒的に女性が多いのが分かる。
【モデルナ社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 3月 20 日)以降、スパイクバックス筋注の副反応疑い報告において、医療機関からアナフィラキシーとして報告された事例が新たに 12 件増加し(うち、 3 回目接種後の事例は 8 件)あり、令和 3 年 5 月 22 日から令和 4 年 4 月 17 日までに報告された副反応事例は、計 553 件(うち、 3 回目接種後の事例は 28 件)となった。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 4 月 17 日までに報告された 553 件のうち、アナフィラキシーの疑いのある事例を対象に、専門家の評価を実施し、評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 9(±0) | 8(±0) | 1(±0) | 0(±0) |
2 | 55(+4) | 36(+1) | 14(±0) | 5(+3) |
3 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
4 | 463(+8) | 321(+2) | 119(+1) | 23(+5) |
5 | 26(±0) | 25(±0) | 1(±0) | 0(±0) |
合計 | 553(+12) | 390(+3) | 135(+1) | 28(+8) |
○ 「ブライトン分類」での評価は、 553 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 64 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 64 件/ 59,496,686 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 1.1 件
○ ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数
年齢(歳) | 報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 性別不明 | ||
0~4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
5~9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
10~14 | 1 | 0 | 1 | 0 |
15~19 | 5 | 0 | 5 | 0 |
20~24 | 12 | 5 | 6 | 1 |
25~29 | 9 | 2 | 7 | 0 |
30~34 | 11(+1) | 1(+1) | 10 | 0 |
35~39 | 7 | 3 | 4 | 0 |
40~44 | 5(+1) | 0 | 5(+1) | 0 |
45~49 | 4 | 1 | 3 | 0 |
50~54 | 3 | 0 | 3 | 0 |
55~59 | 5(+1) | 3(+1) | 2 | 0 |
60~64 | 0 | 0 | 0 | 0 |
65~69 | 2(+1) | 0 | 2(+1) | 0 |
70~74 | 0 | 0 | 0 | 0 |
75~79 | 0 | 0 | 0 | 0 |
80歳以上 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不明 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 64(+4) | 15(+2) | 48(+2) | 1 |
(参考) 65歳以上 |
2(+1) | 0 | 2(+1) | 0 |
(参考) 12 ~ 17 |
2 | 0 | 2 | 0 |
(参考) 18 ~ 24 |
16 | 5 | 10 | 1 |
表から見て取れることは・・・。
【年齢】
65 歳未満・・・ 62 ( +3 ) 例
65 歳以上・・・ 2 ( +1 ) 例
〔考察〕 これまで同様、 65 歳未満の増加が見て取れた。また、今回から 12 ~ 17 歳及び 18 ~ 24 歳の集計が報告されるようになったので注視したほうが良いかもしれない。
【性別】
男性・・・ 15 ( +2 ) 例
女性・・・ 48 ( +2 ) 例
〔考察〕 ファイザー社同様、副反応は圧倒的に女性が多いのが分かる。
【アストラゼネカ社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 3 月 20 日)以降、バキスゼブリア筋注の副反応疑い報告において、医療機関からアナフィラキシー疑いとして報告された事例が 1 件増加し、令和 3 年 8 月 3 日から令和 4 年 4 月 17 日までに報告されたアナフィ ラキシー疑い事例は計 6 件となった。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 4 月 17 日までに報告された 6 事例を対象に、専門家の評価を実施し、評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
2 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
3 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
4 | 6(+1) | 3(+1) | 3(±0) | 0(±0) |
5 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
合計 | 6(+1) | 3(+1) | 3(±0) | 0(±0) |
○ 「ブライトン分類」での評価は、 6 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 0 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 0 件/ 116,907 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 0 件
○ ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数は無し。
アナフィラキシーに関する考え方(副反応疑い報告の状況に関するまとめ)
【小児(5-11歳用)ワクチン接種後の副反応に関する考え方】
○ 副反応疑い報告制度において、小児( 5 ~ 11 歳用)ワクチン接種後の副反応疑いとして報告されたものは、接種開始から 2022 年 4 月 17 日までに医療機関報告が 1 回目接種後 25 件( 0.0031% )、 2 回目接種後 4 件( 0.0010% )、製造販売業者報告が 1 回目接種後 27 件( 0.0033% )、 2 回目接種後 3 件( 0.0008% )であり、引き続き 12 歳以上のワクチン接種後の報告頻度と比較すると、低い傾向であった。
○ 疑い報告の症状名は、発熱、けいれん発作等であった。
○ なお、心筋炎疑いとして報告された事例は、 1 回目接種後 1 件( 100 万回接種あたり 1.2 件)及び 2 回目接種後 1 件( 100 万回接種あたり 2.5 件)であり、同 0 件が心筋炎(ブライトン分類 1 -3 )と評価された。また、心膜炎疑いとして報告された事例は、 1 回目接種後 1 件( 100 万回接種あたり 1.2 件)であり、同 1 件が心膜炎(ブライトン分類 1-3 )と評価された。
○ また、 2022 年 5 月 6 日までに死亡として報告された事例が 1 件あった。基礎疾患として、出生時重症新生児仮死、低酸素性虚血性脳症があり、生直後より人工呼吸管理をされていた事例であり、症状の概要に記載された死因等は、呼吸不全、心不全、心筋炎等であった。専門家による評価は γ であった。
【小児ワクチン接種に関する論点のまとめ】
○ 小児( 5 ~ 11 歳用)ワクチン接種後の事例について、国内外における報告状況を注視していくとともに、引き続き評価・分析を行っていく。また、最新の報告状況等を踏まえ、必要に応じ、周知・注意喚起を行っていく。
○ 小児( 5 ~ 11 歳用)ワクチン接種後の報告状況について、現時点においては、引き続き、ワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められないと考えてよいか。
【 3 回目接種についてのまとめ】
○ ファイザー社ワクチンの 3 回目接種については、接種開始後( 2021 年 12 月 1 日)より、今回の審議会( 2022 年 4 月 17 日時点)までにおいて、医療機関より 1,427 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.041% )、製造販売業者より 649 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0019% )の報告があり、 より少ない傾向であった。また、 3 回目接種後の死亡として 113 件の報告があった。
○ 武田/モデルナ社ワクチンの 3 回目接種については、医療機関より 586 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0022%)、製造販売業者より 319 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0012% )の報告があり、 1 ・ 2 回目接種時より少ない傾向であった。また、 3 回目接種後の死亡として 69 件の報告があった。
【 3 回目接種に関する論点のまとめ】
○ 国内の 3 回目接種後に係る副反応疑い報告状況については、現時点では重大な懸念は認められない。
○ 国内外の 3 回目接種後の係る副反応疑いの報告状況についても、引き続き注視していく。
〔考察〕今回 3 回目接種、小児対象へのワクチンにスポットをあてているが、検証もされないままに、 3 回目接種、小児接種を拙速に進めている感は否めなし。そして、今会議では 4 回目接種についても語られている。前回、接種間隔が、 6 ヶ月から 5 ヶ月へと短縮された旨をお伝えしたが、通常、本剤 2 回目の接種から少なくとも 5 ヶ月経過した後に 3 回目の接種を行い、更に、 4 回目接種については、ベネフィットとリスクを考慮した上で、高齢者等において、 3 回目の接種から少なくとも 5 ヶ月月経過した後に接種を判断することができるとされている。前回も書いたが、副反応発生率を確率だけで少なく見積もっているようだが、家族にとっては、何百万分の 1 ではなく、 1 分の 1 の発生だということを忘れないで欲しいものだ。ワクチンを接種すれば接種するほど、変異株を産み、自身の中の抗体が本来あるべきものではなくなっていっているということにそろそろ気づいて欲しいものだ。
次回へ・・・。