「真実の口」2,109 ‟がん”という病 56~療養生活のためのヒント①~

前回の続き・・・。

22 回に渡り、‟がん”治療によって引き起り得る様々な症状とその対処法を記してきた。

今回から、療養生活を送るときに役に立つ、食生活のポイント、適度な運動や休養をとることなど、体調を整えるための日常的な心がけ、ちょっとした工夫について取り上げてみる。

《療養生活のためのヒント》

【患者同士の支え合いの場を利用する】

● 同じ経験を持つ患者の話を聞くことで、気持ちが軽くなったり、療養生活を快適に送る知恵を得られることがあるので、担当医や専門家の話とともに、うまく取り入れるとよい。

1. 当事者の視点で話を聞いてもらえる患者同士の支え合いの場

● ‟がん”の治療や療養生活においては、色々な悩みや不安が出てくる。

● ‟がん”と診断された直後や治療を始めたころは、家族や周りの人も本人の話に耳を傾けてくれることが多いが、治療の経過が安定してきたり療養生活が長くなると、何度も聞くのは疲れてくるし、本人自身も遠慮して話さなくなりがちである。

● この時期には、‟がん”の病気そのものよりも、療養や社会復帰のこと、経済的なことなど、普段の生活についての個人的な心配事も気になることが多くなり、誰にどのように相談すればよいのかわからないと思い悩んで、孤独感が深まる原因になることもある。

● ‟がん”相談支援センターでも、治療のこと以外の日常生活の心配事についても相談することができるが、このようなときに当事者の視点で話を聞き、支えになってくれるのが「患者同士の支え合い」である。

● 他の患者の話を聞くことによって、「悩んでいるのは自分ひとりではない」と感じられたり、「同じような問題を抱えている人がほかにもいる」ということがわかるだけでも、気持ちがずいぶん楽になるものである。

2. 自分の体験がほかの患者さんを支援する力になることも

● 他の患者の経験を聞くことで、自分の悩みを解決する糸口を見つけたり、問題との付き合い方を学んだりすることもできる。

● 特に、生活する上で不便に感じている治療の後遺症などへの対処や工夫について、実体験に基づくいろいろな解決方法やコツがとても参考になることがある。

● ‟がん”の体験を素直に話して相手に伝えることで、自分が病気のことを、どのように理解して受け止めていたのかがはっきりしてきて、治療や療養生活の中でこだわってきたものが見えてきたり、同じ体験をした人に話を聞いてもらうことによる安心感や連帯感が生まれてくるという利点もある。

● こうした体験に基づく知恵は、ほかの誰かにも貴重なヒントになるばかりでなく、今度は自分がほかの誰かの力になれるということを知り、自分自身に自信を取り戻すきっかけになるともいわれている。

● このように「患者同士が支え合うこと」には、様々な良い影響を及ぼすことがたくさんある。

3. 患者同士の支え合いの場にはどのようなものがあるのか?

● 患者同士が出会える場、支え合いの場としては、患者会患者サロンピアサポートなどがあります

《 患者会 》

患者会とは、同じ病気や障害、症状など、何らかの共通する患者体験を持つ人たちが集まり、自主的に運営する会のことである。

・お互いの悩みや不安を共有したり、情報を交換したり、会によっては、患者のために様々な支援プログラムを用意していたり、社会に対する働きかけを行う活動をしているところもある。

・活動の内容は、それぞれの会によって違うが、定例会による気持ちや情報の分かち合い、電話や電子メールなどによる悩みの相談、会報による情報提供などを行っていることが多い。

・また、特定の‟がん”に限定している会もあれば、様々な種類の‟がん”を対象に活動しているところもある。

《 患者サロン 》

患者サロンとは、患者やその家族など、同じ立場の人が、‟がん”のことを気軽に本音で語り合う交流の場のことである・

・最近、患者会の少ない地域でも広まってきている。

・最近は、患者や市民の要望を受けて、‟がん”診療連携拠点病院など医療機関の中や公民館などに患者サロンを設置する病院や自治体も増えている。

・そのため、運営の仕組みは様々で、患者や家族が主体になっているところもあれば、医療者を中心に活動しているところもあり、両者が協力しながら運営している患者サロンもある

《 ピアサポート 》

・ピア(  Peer )とは「仲間」という意味で、ピアサポートとは、同じような悩みあるいは経験を持つグループの中で、同じ仲間として対等な立場で行われる支援のことでる。

・仲間から支えられていると感じられる場にいることによって、お互いに支え合ったり、悩みの解決につながったりすることが期待されている。

・‟がん”におけるピアサポートは、患者や家族の悩みや不安に対して、‟がん”経験者が自分の経験を生かしながら相談や支援を行うといった形での取り組みである。

・この活動が始まったのは、ここ数年のことで、医療機関内などで実施されている。

4. 患者同士の支え合いの場を利用するには?

● 支え合いの場の探し方

患者会やその他の支え合いの場に関する基本的な情報(目的、設立年、代表者名、連絡先、対象となるがんの種類、主な活動内容、活動地域、会員数、年会費など)は、書籍や雑誌、インターネットで調べられる。

・また、住まいの近くの‟がん”診療連携拠点病院の‟がん”相談支援センターに問い合わせても、地域の患者会の情報を得られることがある。

患者会がない地域に住んでいる人は、‟がん”診療連携拠点病院の中に患者や家族が集える場があるか、‟がん”相談支援センターに問い合わせてみると良い。

● 利用するときの心構えと注意点

・自分に合った患者会を探すためには、まず定例会などを見学する。

・ひとりで参加しにくい場合は、家族と一緒に行ってみるのも良い。

・定例会は、曜日や時間帯、会場によって参加する人が入れ替わることもあるので、気の合う人がいなくても、善しあしをすぐに決めてしまず、何回か続けて参加してみた方が良い。

患者会によって目的や活動内容に違いがあったり、運営している人や仕組みが異なっているので、実際に足を運んでみると特色がわかってくる。

・実際に行ってみると、雰囲気などが期待していた印象と違う、ということもある。

・家族から患者会への参加を勧められることもあるかもしれないが、無理にがんばらないで、自分自身の気持ちと相談して「参加してみたい」「一度見てみたい」という気持ちになれたら、資料を取り寄せてみる、電話して話を聞いてみる、足を運んでみるというように、少しずつつながりを広げていくスタンスの方が良い。

・患者同士の支え合いの場では、診断されたときの不安や、治療や療養中の心配事や悩みなど、近い体験を持つ人だからこそわかる、色々な悩みを共有したり、体験に基づいた具体的な対処法を伝え合ったりする利点がある。

・その一方、同じ‟がん”であっても、それぞれの人で治療内容や療養生活の状況は違うので、他の人に合った治療法や対処法、療養生活の過ごし方が必ずしも自分にも合うとは限らないことは頭にとどめておく。

・もちろん、医学的なことは、担当医に必ず相談するようにしなければいけない。

● インターネットで参加できる支え合いの場

・インターネットのなかでも「患者コミュニティーサイト」(掲示板、メーリングリスト、チャット)を通して、患者同士の交流が盛んに行われるようになっている。

・これまで患者数の少ない‟がん”の場合、患者会を探しても該当するものがないなど、患者同士が知り合える機会はほとんどなかったが、インターネットが登場したことにより、比較的容易に交流ができるようになった。

「患者コミュニティーサイト」トの中には、インターネット上で知り合った仲間と直接会う場を設けるところもあり、こうした場に参加することで、さらにほかの患者とよりよい関係を築いていけることもある。

● 患者同士が支え合うことのよい面

・悩んでいるのは、自分ひとりではないことに気付き、気持ちが楽になる。

・他の患者さんの経験談を聞くことで、悩みを解決するヒントを得たり、問題との付き合い方を学んだりできる。

・実際の患者体験に基づいた解決方法を伝え合える。

・‟がん”の体験を人に話すことにより、自分の気持ちが整理できる。

・自分の体験がほかの患者さんや家族を支援する力になることを知り、失った自信を取り戻せる。

● 利用するときに注意しておきたいこと

・患者会の中には、ある特定の医療機関(医師)への受診を勧めたり、特定の治療方法を強く勧める、といった団体もまれにあるので注意する。

・電話やメールで資料や情報を取り寄せたり、インターネットでホームページを確認したりするなどして、その中身をよく吟味する。

・気が進まない場合は、そのことをはっきりと伝えて断る。

・特定の治療法や健康食品などを勧められた場合は、必ず担当医やがん相談支援センターに相談する。

次回へ・・・。