The Day – やがて、伝説と呼ばれる日 –
5 月 2 日、 WBA ・ WBC ・ IBF ・ WBO 世界スーパーバンタム級(※注 1 )タイトルマッチが東京ドームで行われた。
(※注 1 ) 階級の呼称は、 WBA ・ WBC はスーパーバンタム級、 IBF ・ WBO はジュニアフェザー級とされているが、契約ウェートは、 118 ~ 122 ポンド( 53.524 ~ 55.338kg )の同一階級である。
4 団体統一王者・井上尚弥(大橋ボクシングジム・ 33 歳)が、元世界 3 階級制覇王者の中谷潤人( M.T ボクシングジム・ 28 歳)を迎え撃っての一戦、「The Day – やがて、伝説と呼ばれる日 -」である。
ここで、両者について詳しく触れよう。
井上尚弥選手は、圧倒的な実力と完璧なボクシングスタイルから『日本ボクシング史上最高傑作』と称されており、世界で最も権威あるアメリカのボクシング専門誌「 The Ring 」が格付けするパウンド・フォー・パウンド(※注 2 )ランキングにおいて、日本人として初めて 1 位の評価を受けた選手である。
(※注 2 ) 全階級を通じて誰が最も優秀なボクサーであるかを経歴と表層上の戦力評価で定めるランキングのこと。
元 WBC 世界 ライトフライ 級王者。
元 WBO 世界スーパーフライ級王者。
元 WBA スーパー(※注 3 )・ WBC ・ IBF ・ WBO スーパー世界バンタム級統一王者。
現 WBA スーパー・ WBC ・ IBF ・ WBO スーパー世界スーパーバンタム級統一王者。
(※注 3 ) 世界王座より上位のボクシングの王座。 WBA が 2001 年 1 月より始めた新しい制度(スーパー王者制度)で、この制度の元で認定された王者を、スーパー王者という。
世界 4 階級制覇王者。
WBSS(※注 4 ) バンタム級優勝。
(※注 4 ) World Boxing Super Series(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の略称で、 Comosa 社が開催していたプロボクシングのトーナメント戦。 2017 年から開催され、 2 シーズンが開催され、 2021 年 6 月に第 3 シーズンの開催が発表されたが、開催されないまま消滅に至った。
アジア人初、史上 2 人目の 2 階級 4 団体統一王者。
井上選手が獲得してきたベルトを可視化すると如何にすごいかが分かると思う。

井上選手の経歴を見てみよう。
以下、Wikipedia 等々を参照。
アマチュア時代には、高校生にして 7 つのタイトル(高校総体 2回、国体 2 回、全国高校選抜、全日本選手権、国際大会)を獲得し、高校生史上初のアマチュアボクシングの 7 冠を達成。
プロ転向後にも以下のような軌跡を残している。
プロデビュー戦は、2012 年、プロ受験時のライセンスは B 級だが特例により A 級( 8 回戦以上)ライセンスが認められてのデビュー戦となり( A 級デビューは 1987 年の赤城武幸以来 25 年ぶり 7 人目で 10 代は初)、 4R 2 分 4 秒 KO で勝利。
プロ転向からわずか 3 ケ月で OPBF 東洋太平洋ライトフライ級 10 位にランクインし、日本ライトフライ級 6 位にもランクされた。
プロ 2 戦目は、 2013 年 1 月 5 日、後楽園ホールにて前 WBA 世界ミニマム級王者八重樫東(大橋)の再起戦を前座に差し置き、メインイベントでタイライトフライ級王者ガオプラチャン・チュワタナと 50 キロ契約 8 回戦で対戦し、 1R 1 分 50 秒 KO で下した。
当初、陣営は、世界ランカーとの対戦を計画し 3 選手と交渉し 1 選手とは契約寸前までいったが、相手側の交渉人が井上のデビュー戦の動画を見てキャンセルしてきたといういわくつきである。
2013 年 8 月 25 日、スカイアリーナ座間にて日本ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)と対戦し、試合は 10R 3-0 ( 97-94 、 98-93 、 98-92 )の判定勝ちで、辰吉丈一郎以来 23 年ぶりに当時国内最短タイ記録となる 4 戦目での日本王座を獲得。
2013 年 12 月 6 日、両国国技館にて小野心(ワタナベ)の王座返上に伴い行われた OPBF 東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦で、同級 2 位のヘルソン・マンシオと対戦し、 5R 2 分 51 秒 TKO 勝ちで八重樫東らと並ぶ当時の国内男子最短タイ記録となるデビュー 5 戦目で OPBF 王座を獲得。
2014 年 4 月 6 日、大田区総合体育館にて WBC 世界ライトフライ級王者アドリアン・エルナンデスに挑戦し、 6R 2 分 54 秒 TKO 勝ちを収め、当時日本人男子最速となるプロ入り 6 戦目での世界王座獲得。
プロ入り 6 戦目での世界王座獲得は、プロテスト実技試験終了後に宣言しており、有言実行となった。
また、この試合の 3 週間前にインフルエンザにかかるなど、体調は万全に程遠く、減量苦の影響で 3 回終了時から左足の太ももの裏がつってしまい、まともに足が動かない状態となり、最終ラウンドまで左足がもたないと判断し、覚悟を決めて打ち合いを挑んでの KO 勝利だったことを明かしている。
王座を 1 度防衛後、 1 階級上のフライ級でも減量が厳しいため、 2 階級上のスーパーフライ級への転向。
2014 年 12 月 30 日、東京体育館で WBO 世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエスに挑戦し、 2R 3 分 1 秒 KO 勝ちを収め、当時世界最速となる 8 戦目での飛び級での 2 階級制覇を達成。
王者ナルバエスは、フライ級世界王座を 16 連続防衛、 WBO 世界スーパーフライ級王座を 11 連続防衛中でプロ・アマ通じて 20 年以上 150 戦超のキャリアで一度もダウンを喫した事はなく、唯一のプロでの敗戦は1階級上のバンタム級でノニト・ドネアに判定負けしたのみでスーパーフライ級以下では 14 年間無敗の王者だった。
2016 年 12 月 30 日、有明コロシアムで元 WBA 世界スーパーフライ級王者で WBO 世界スーパーフライ級 10 位の河野公平(ワタナベ)と対戦し、 6R 1 分 1 秒 TKO 勝ちを収め、4度目の防衛に成功。
7 度の防衛に成功後、バンタム級に転向。
2018 年 5 月 25 日、 WBA 世界バンタム級レギュラー王者ジェイミー・マクドネルと対戦し、1R 1 分 52 秒 TKO 勝ちを収め 3 階級制覇を達成。
デビューから 16 戦目での 3 階級制覇は日本最速記録。
2018 年 7 月 11 日、 WBSS が正式に井上の出場を発表。
2018 年 10 月 7 日、横浜アリーナで WBA 世界バンタム級 4 位で元 WBA 世界バンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノと WBSS 一回戦を行い、 1R 1 分 10 秒 KO 勝ちを収め初防衛に成功。
パヤノは、 8 年のプロ・キャリアで初めての KO 負けとなり、この試合で井上は 2018 年度リングマガジン ノックアウト・オブ・ザ・イヤーを受賞。
2019 年 5 月 18 日、イギリス・グラスゴーの The SSE Hydro で WBSS 準決勝として、 IBF 世界バンタム級王者エマヌエル・ロドリゲスと対戦し、 2R 1 分 19 秒でTKO勝ちを収め、 WBSS 決勝戦への進出を決めると共に、 WBA 王座の2度目の防衛、並びに IBF 王座及びリングマガジン王座獲得に成功。
ロドリゲスは、 19 戦 19 勝( 12KO ) 無敗だったが初の黒星となった。
2019 年 11 月 7 日、さいたまスーパーアリーナで行われた、 WBSS バンタム級決勝で世界 5 階級制覇王者でもある WBA 世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネアと対戦し、 12R 3-0 ( 116-111 、 117-109 、 114-113 の判定勝ちを収め、 WBA 王座の王座統一による 3 度目の防衛、 IBF 王座の初防衛に成功し、 WBSS バンタム級初代王者に輝いた。
この試合の後、井上は自身の Twitter で、 2R に浴びたドネアの右フックで右目眼窩底と鼻を骨折したこと、手術はせずに保存治療をすることを発表した。
2020 年 10 月 31 日(日本時間 11 月 1 日)、ネバダ州ラスベガスの MGM グランド内ザ・バブルにて、ジェイソン・モロニーと対戦し、 7R 2 分 59 秒 KO 勝利を収め、 WBA 王座 4 度目、 IBF 王座 2 度目の防衛に成功。
その後、マイケル・ダスマリナス、ケンナコーン・ルアンカイモック等を KO 勝利で退け防衛記録を伸ばす。
2022 年 6 月 7 日、日本人初の三団体統一戦としてドネアと約 2 年 7 ケ月振りに再戦を行い、2R 1 分 24 秒 TKO 勝ちを収め、 WBC 王座を獲得、 WBA 王座の 7 度目、 IBF 王座の 5 度目の防衛に成功し、日本人初の三団体統一王者となった。
2022 年 6 月 10 日(日本時間で 11 日)、世界で最も権威のあるアメリカのボクシング専門誌『ザ・リング』が格付けするパウンド・フォー・パウンド・ランキングにおいて、井上が第 1 位に選出され、 2022 年 8 月 24 日のランキング更新で第 2 位に後退するまでの間 1 位を維持。
2022 年 12 月 13 日、 WBO 世界バンタム級王者ポール・バトラーと対戦し、11R 1 分 9 秒て KO 勝ちを収め、 WBO 王座を獲得、WBA 王座の 8 度目、 WBC 王座の 1 度目、 IBF 王座の 6 度目の防衛に成功し、ボクシング史上 9 人目、バンタム級及びアジア人として初の 4 団体統一王者となった。
2023 年 1 月 13 日、保持していた WBA スーパー・ WBC ・ IBF ・ WBO 世界バンタム級王座の返上と、スーパーバンタム級転向を発表。
2023 年 7 月 25 日、有明アリーナにおいて、 WBC ・ WBO 世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン・フルトンに挑戦し、8R 1 分 14 秒 TKO 勝ちを収め、 WBC ・ WBO 世界スーパーバンタム級王座を獲得し、 4 階級制覇を達成。
2023 年 12 月 26 日、有明アリーナにおいて、 WBA スーパー・ IBF 世界スーパーバンタム級統一王者のマーロン・タパレスと対戦し、 10R 1 分 2 秒 KO 勝ちを収め、 WBA スーパー、 IBF を獲得、また WBC 王座、 WBO 王座の初防衛にも成功し、ボクシング史上 2 人目の 2 階級での 4 団体統一を達成。
2024 年 5 月 6 日、東京ドームにおいて、 WBC 世界スーパーバンタム級 1 位の指名挑戦者ルイス・ネリと対戦し、 6R 1 分 22 秒 TKO 勝利をおさめ、 WBC ・ WBO 王座は 2 度目、 WBA ・ IBF 王座の初防衛に成功すると同時に日本人プロボクサーとしては史上初、アジア系プロボクサーとしてはフィリピン出身のマニー・パッキャオ、同じくフィリピン出身で井上と2度対戦したノニト・ドネアに次いで史上3人目の WBC ダイヤモンド王座獲得に成功した。
ルイス・ネリ、メキシコのプロボクサーで、元 WBC 世界バンタム級、元 WBC 世界スーパーバンタム級の世界 2 階級制覇王者ではあるが、 2017 年、当時 WBC 世界バンタム級王者であった山中慎介(帝拳)と対戦し、 2R 29 秒 TKO 勝ちで王座を奪取したが、その後のド-ピング検査で、禁止薬物が陽性となり、山中との再戦が要求され、その再戦では、体重超過で王座がはく奪されるもののその試合も山中から KO 勝利をおさめ“悪童”と評されるネリ日本人からは総スカンの嫌われ者となった。
この試合で、そんな男に井上が初回にプロキャリア初のダウンを奪われ、「まさか、井上まで・・・?」と日本人が見守る中、 2R・ 5R ・ 6R にダウンを奪い返し、合計 3 度のダウンを奪い快勝し、ネリは試合直後、病院直行となった。
2024 年 9 月 3 日、有明アリーナにて、 WBO 世界スーパーバンタム級 2 位のドヘニーと対戦し、 7R 16 秒 TKO 勝利をおさめ、 WBO ・ WBC 王座は 3 度目、 IBF ・ WBA スーパー王座は 2 度目の防衛に成功。
2024 年 12 月 14 日、対戦予定だったグッドマンがスパーリング中に左目上をカットしたことにより試合は 2025 年 1 月 24 日に延期され、更に、同年 1 月 11 日にグッドマンが左目上を再びカットしたため対戦は結局キャンセルとなり、 WBO 世界スーパーバンタム級 11 位のキム・イェジュン(韓国)が代役として井上と対戦することとなったが、試合はあっさり 4R 2 分 25 秒 KO 勝ちを収め、 4 度目の WBO ・ WBC 王座、 3 度目の IBF ・ WBA スーパー王座の防衛に成功。
この勝利により元 WBA 世界ヘビー級王者のジョー・ルイス(※注 5 )が保持していた世界戦での KO 勝利数としてはタイ記録となる 22 勝となった。
(※注 5 ) ジョー・ルイス( 1914 年 5 月 13 日 – 1981 年 4 月 12 日)は、アメリカ合衆国の元プロボクサーで、元 WBA 世界ヘビー級王者。全階級を通じて最多防衛記録である世界王座 25 回連続防衛の記録保持者であり、この記録は現在も破られていない。
2025 年 5 月 4 日、T-モバイル・アリーナで WBA 世界スーパーバンタム級 1 位のラモン・カルデナスと対戦し、 8R 45 秒 TKO 勝ちを収め、 WBO ・ WBC 王座は 5 度目、 IBF ・ WBA 王座は 4 度目の防衛に成功。
この勝利によりジョー・ルイスが保持していた世界戦での KO 勝利数の 22 勝を 77 年ぶりに上回る史上最多の 23 勝となり、世界戦の通算勝利数もこの試合の前日に WBA ・ WBC ・ IBF ・ WBO 世界スーパーミドル級王座統一戦を行い判定勝ちで世界スーパーミドル級4団体王座統一を果たしたサウル・アルバレスと並ぶ男子プロボクサータイ記録の 25 勝となった。
2025 年 9 月 14 日、名古屋市北区のIGアリーナにて、 WBA 世界スーパーバンタム級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフと団体内王座統一戦を行い、12R 3-0 ( ( 118 – 110 × 2 、 117 – 111 )の判定勝ちを収め、アフマダリエフの WBA 暫定王座を吸収させたとともに WBO ・ WBC 王座は 6 度目、 IBF 及び WBA 王座は 5 度目の防衛に成功。
この勝利で、世界戦の通算勝利数は 2025 年 9 月 13 日にラスベガスでテレンス・クロフォードに判定負けを喫し世界スーパーミドル級 4 団体王座から陥落したサウル・アルバレスを上回る 26 勝となった。
2025 年 12 月 27 日、リヤドのモハメド・アブド・アリーナにて、 WBC 世界スーパーバンタム級 2 位のアラン・ピカソと対戦し、 12R 3-0( 120 – 108 、 117 – 111 、 119 – 109 )の判定勝ちを収め、 WBO ・WBC 王座は 7 度目、 IBF 及び WBA 王座は 6 度目の防衛に成功。
この勝利で、単独史上最多の世界戦 27 連勝を達成。
日本人ボクサーが世界王座を 1 年で 4 度防衛するのは具志堅用高に次いで 2 人目、プロボクサー全般では晝田瑞希に次いで 3 人目、リングマガジン王座を年間4度防衛したのは1983年にラリー・ホームズが達成した以来の快挙だった。
以下が井上選手の残した軌跡である。
【 世界記録 】
★ 世界戦最多連勝 28 連勝 ( 2 位はフロイド・メイウェザー・ジュニア、ジョー・ルイスの 26 連勝)
★ 世界戦最多 KO 23KO ( 2 位はジョー・ルイスの 22KO )
★ 4 団体統一王座最多防衛 7 度( 2 位はサウル・アルバレスの 4 度)
★ 2 階級 4 団体統一王者( 2022 年にバンタム級、 2023 年にスーパーバンタム級統一で達成。バンタム級統一時は史上 9 人目、アジア人初。 2 階級統一は史上 2 人目。)
★ 初のバンタム級、スーパーバンタム級での統一
★ 初の王座決定戦なしでの 1 つずつの王座奪取(バンタム級統一時)
★ 初の全王座 KO 勝利での奪取
★ パウンド・フォー・パウンド 1 位(「リングマガジン」によるもの)
【 日本記録 】
★ 世界王座最速 2 階級制覇 8 戦目(元世界最速記録。後にワシル・ロマチェンコがプロ 7 戦目に更新し、現在は田中恒成と並んで世界 2 位の記録)
★ 世界戦最多勝利 28 勝( 2 位は井岡一翔の 22 勝)
★ 世界戦連続 KO 11KO ( 2 位は具志堅用高の 6KO )
★ 歴代日本人世界王者最高 KO 率 87% ( 31 勝 27KO 無敗)
★ 世界戦海外防衛 6 度 ( 2 位は西岡利晃、亀田和毅、京口紘人の 2度)
★ 世界主要 4 団体王座最多獲得 10 ( 2 位は高山勝成の 6
★ 世界主要 4 団体ベルト最速獲得 18 戦目 ( 2 位は高山勝成の 36 戦目。リングマガジンベルトを含むと日本人唯一となる5本の獲得者)
これだけ並べると井上選手が如何にすごいかが分かると思う。
ここまでの戦績は、 32 戦 32 勝( 27KO )無敗。
次回、中谷選手を紹介する。











